CARATS(Collaborative Actions for Renovation of Air Traffic Systems:航空交通システムの変革にむけた協調的行動)とは、現在及び近い将来のアジア・太平洋地域における急速な航空交通需要の増加に対応するため、国土交通省航空局の主導により下記のステークホルダー(利害関係組織)との協働作業によって推進されている、わが国の次世代航空交通システム構築にかかる行動計画です。
CARATSは以下の内容を、目標(2025年時想定)として定めています。
北太平洋上の航空路は、アジア地域の経済活動の著しい活性化を受け、大変な混雑空域となっています。このため安全で、経済的/効率的な運航を可能とする方策として、データリンクを利用し航空機の航行状況を精密に監視して管制することによって、従来の15分(約120NM以上)の管制間隔から最小管制間隔30NMに短縮して運航されています。
しかし、データリンク不具合機が発生した場合には、最悪従来の管制間隔に戻す必要があります。 管制官は、緊急に管制間隔を大きくするため、危機回避を伴う業務を実施することになり、業務効率の低下及び航空機の遅延が発生します。
データリンク不具合は、主に日本と米国との間で管制移管の際発生することが想定されることから、このような状況が発生しないよう、日米間において、データリンク相互運用性向上のための国際会議が毎年定期的に行われています。
当社では同国際会議において、日本国政府(国土交通省航空局)に随行し、数年次にわたるデータリンクの不具合事象の解析結果及び解決策を提案する等、データリンク相互運用性向上を通じ、太平洋上の航空交通の容量増加と安全性の維持向上に貢献してまいりました。当該解析作業が軌道に乗ったこともあり、現在解析作業等は、当社の実施した方法を踏襲し航空局内部で行われています。
また、一昨年、同日米国際会議25周年記念式典が開催され、当社担当者も国土交通省航空局長と共に陪席いたしました。
注)NM:nautical mile(ノーティカルマイル)の略。長さの単位で1NM=1852 m)
航空管制業務には、日本列島の上空を飛行する航空機を管制する航空路管制業務、太平洋、日本海、東シナ海等洋上を飛行する航空機を管制する洋上管制業務、繁忙空港において空港から60~100NM程度内を着陸・離陸のために飛行する航空機を管制するターミナル管制業務、空港から5NM内を着陸・離陸のために飛行する飛行場管制業務があります。
現在、航空路管制業務、洋上管制業務、ターミナル管制業務、飛行場管制業務で使用している各管制情報処理システムは、ハードウェア、ソフトウェアとも、各業務の要件に合わせ異なる仕様で製造されています。このため、システム毎の設計開発費が必要となるとともに、運用時においても、それぞれ機器仕様が違うため異なる予備品を確保する必要があります。
また、管制官が管制業務異動する際、それぞれのシステムが異なっていることから訓練時間が長期化するなど多額の経費が必要となっています。
これらの課題を解決するためには、ハードウェア、ソフトウェア並びにマンマシンインターフェースの共通化が必要になります。
当社は、管制卓の共通化(屋台骨方式)を実現するため、各管制業務の業務分析を行い、共通化可能なシステムを抽出すると共に、各業務における特殊性を考慮したシステム概念を提案しました。マンマシンインターフェースに関しては、最近増加している女性管制官の体格差(身長、座高、手の長さ)を考慮して、95パーセンタイル以上の管制官が通常の姿勢のまま管制業務が実施可能な環境を考慮しました。
また、これらの実証のためモックアップ(模型)を製作し、管制官に実際に触れて頂くとともに、管制官にアンケート調査を実施し、結果を反映した次期管制卓用件を取りまとめる等、次期管制卓は製造設計に貢献しています。
これらの装置は、現在進められている次世代統合管制情報処理システム整備に反映され、航空管制官・航空管制運航情報官の異動というライフスタイルを考慮したものとなっており、各機器のインターフェースには目まぐるしく進化する技術革新に対応するため、COTS(汎用)品の利用等を考慮し、デファクトスタンダードとなっている基準を採用しており、これらは経費削減にも繋がっています。
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